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SBC(シングルボードコンピューター)の火付け役としてちっちゃいコンピューターの普及に貢献するRasbperry Piシリーズについて、これまで発売された商品のスペックと特徴、用途、展望についてユーザー視点からまとめます。
歴代Raspberry Piシリーズを振り返る
Aシリーズ
AシリーズはEthernetポートがないシリーズになります。
SoC | CPU | RAM | USBポート | Ethernetポート | 無線LAN | Bluetooth | GPIO | 基盤サイズ | 発売年 | |
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Raspberry Pi 1 Model A | Broadcom BCM2835 | ARM1176JZF-S | 256MB | 2.0×1ポート | 無 | 無 | 無 | 26ピン | 85.60 × 56.5 mm | 2013 |
Raspberry Pi 1 Model A+ | Broadcom BCM2835 | ARM1176JZF-S | 256MB | 2.0×1ポート | 無 | 無 | 無 | 40ピン | 65 × 56.5 mm | 2014 |
Raspberry Pi 3 Model A+ | Broadcom BCM2837B0 | ARM Cortex-A53 4コア | 512MB | 2.0×1ポート | 無 | IEEE 802.11 b/g/n/ac 2.4/5GHz | Bluetooth 4.2, Bluetooth Low Energy | 40ピン | 65 × 56.5 mm | 2018 |
Bシリーズ
BシリーズはEthernetポートを搭載、USBポートも複数搭載するなど拡張性に優れたメインとなるシリーズです。
SoC | CPU | RAM | USBポート | Ethernetポート | 無線LAN | Bluetooth | GPIO | 基盤サイズ | 発売年 | |
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Raspberry Pi 1 Model B | Broadcom BCM2835 | ARM1176JZF-S | 256MB / 512MB | 2.0×2ポート | 10⁄100 Mbps | 無 | 無 | 26ピン | 85.60 × 56.5 mm | 2012 |
Raspberry Pi 1 Model B+ | Broadcom BCM2835 | ARM1176JZF-S | 512MB | 2.0×4ポート | 10⁄100 Mbps | 無 | 無 | 40ピン | 85.60 × 56.5 mm | 2014 |
Raspberry Pi 2 Model B | Broadcom BCM2836 / Broadcom BCM2837 | ARM Cortex-A7 / ARM Cortex-A53 | 1GB | 2.0×4ポート | 10⁄100 Mbps | 無 | 無 | 40ピン | 85.60 × 56.5 mm | 2015 |
Raspberry Pi 3 Model B | Broadcom BCM2837 | ARM Cortex-A53 4コア | 1GB | 2.0×4ポート | 10⁄100 Mbps | IEEE 802.11 b/g/n 2.4GHz | Bluetooth 4.1, Bluetooth Low Energy | 40ピン | 85.60 × 56.5 mm | 2016 |
Raspberry Pi 3 Model B+ | Broadcom BCM2837B0 | ARM Cortex-A53 4コア | 1GB | 2.0×4ポート | Gigabit Ethernet(最大300Mbps) | IEEE 802.11 b/g/n/ac 2.4/5GHz | Bluetooth 4.2, Bluetooth Low Energy | 40ピン | 85.60 × 56 mm | 2018 |
Raspberry Pi 4 Model B | Broadcom BCM2711 | ARM Cortex-A72 4コア | 1GB / 2GB / 4GB | 3.0×2ポート、2.0×2ポート | Gigabit Ethernet | IEEE 802.11 b/g/n/ac 2.4/5GHz | Bluetooth 5.0, Bluetooth Low Energy | 40ピン | 85.60 × 56 mm | 2019 |
Zeroシリーズ
Zeroシリーズは低消費電力、小型なシリーズになっています。
SoC | CPU | RAM | USBポート | Ethernetポート | 無線LAN | Bluetooth | GPIO | 基盤サイズ | 発売年 | |
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Raspberry Pi Zero | Broadcom BCM2835 | ARM1176JZF-S | 512MB | 2.0×1ポート | 無 | 無 | 無 | 40ピン | 65 × 30 mm | 2015 |
Raspberry Pi Zero W | Broadcom BCM2835 | ARM1176JZF-S | 512MB | 2.0×1ポート | 無 | IEEE 802.11 b/g/n 2.4GHz | Bluetooth 4.1, Bluetooth Low Energy | 40ピン | 65 × 30 mm | 2017 |
Raspberry Pi Zero WH | Broadcom BCM2835 | ARM1176JZF-S | 512MB | 2.0×1ポート | 無 | IEEE 802.11 b/g/n 2.4GHz | Bluetooth 4.1, Bluetooth Low Energy | 40ピン | 65 × 30 mm | 2018 |
Compute Module
Compute ModuleはSDカードスロットがなく、外部機器と接続しない組み込み向けのシリーズです。
SoC | CPU | RAM | USBポート | Ethernetポート | 無線LAN | Bluetooth | GPIO | 基盤サイズ | 発売年 | |
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Compute Module (CM1) | Broadcom BCM2835 | ARM1176JZF-S | 512MB | 2.0×2ポート(USB、MicroUSB) | 無 | 無 | 無 | 46ピン | 67.6 mm × 30 mm | 2014 |
Compute Module 3 (CM3) | Broadcom BCM2837 | ARM Cortex-A53 | 1GB | 2.0×2ポート(USB、MicroUSB) | 無 | 無 | 無 | 46ピン | 67.6 mm × 31 mm | 2017 |
Compute Module 3 Lite (CM3L) | Broadcom BCM2837 | ARM Cortex-A53 | 1GB | 2.0×2ポート(USB、MicroUSB) | 無 | 無 | 無 | 46ピン | 67.6 mm × 31 mm | 2017 |
特徴
Raspberry Piシリーズの特徴として以下の点が挙げられます。
廉価
イギリスの非営利財団Raspberry Pi Foundationによって開発され、とにかく廉価であり使いこなせなくても手に取ってみようと思える価格設定で発売1したことが衝撃的でした。
質素
開発用として見た基盤としてのRaspberry Piは仕様がかなり質素になっています。この手の基盤に付き物のRS-232ポートがなく、ストレージもHDDやSSDではなく低速で、書き換える用途を考えた場合に耐久性に難があるSDカードを採用しています。かといって機能が不十分かと言えば必ずしもそうではなく、シリアル通信はRS-232ポートの代わりにGPIOを使用し、HDDやSSDはUSBポートから変換することで使うこともできます。
PCで一般的に使われるCPUであるx64ではなくARMを採用したことも豪華な命令セットを高速に動作させることを最初から目的としていないことを伺わせます。2
回路図の公開
質素である事と関連しますが、Raspberry Piシリーズはハードウェアである基盤自体の回路図も公開しています。
https://www.raspberrypi.org/documentation/hardware/raspberrypi/schematics/README.md
ハードウェアとしての基盤の寸法にあったケースは公式ケースもありますが、GPIOにマウントするオリジナルのHutも含め、様々なオリジナルのケースを販売するサプライヤーの参入を促す側面が感じられます。
技術標準の採用
Raspberry Piシリーズでは標準の電源供給によくあるDCコネクターではなくMicroUSBポートを採用しています3。小さな基盤の電源供給はDCコネクタを使うのが一般的ですが、この場合長らくACアダプターの出力電圧は5Vなのか9Vなのか12Vなのか、センタープラスでいいのか端子の形状はという組み合わせを都度留意する必要があり、結局専用のACアダプターを揃えないと使えないという状況でしたが電源供給としてMicroUSBとすることでこのうち電圧と端子形状が必然的に統一されました。
一方で元来のUSB規格よりもかなり大きな電流を要求する側面もあり、電源供給に使用するUSBアダプターを選ぶ状況もありましたが、Raspberry Pi 4から端子がUSB Type-Cに変更されたことでここも規格準拠となります4。
映像(・音声)出力にはHDMIポートを使用しており、できるだけコストを削りたい5と思われる製造側の事情よりも使用するユーザーの利便性を考慮しているところも助かります。
できるだけ汎用性の高いものを採用する姿勢が好感触です。
対応OSの選択肢が豊富
手軽な実行環境として発売された結果、かなり多くのOSベンダーが対応OSを投入しています。公式サイトに載っているものだけを挙げてもこれだけあります。
- Raspbian
- NOOBS
- Ubuntu MATE / Ubuntu Core / Ubuntu Server
- Windows 10 IoT Core
- OSMC
- LibreELEC
- Mozilla Web Things
- PiNet
- RISC OS
- Weather Station
- IchigoJam RPi
課題
特徴として記載したものは大半が良い点と受け取れますが、良くない点もあるにはあります。
ケースのクオリティがバラバラ
標準ケースはシンプルでそれはそれで良い点なのですが、多機能で運用する事を考慮するとHutを使用すると専用ケースが必要になる、強度がそもそも貧弱なケースが販売されている、排熱が追い付かないケースがある等、汎用的で使いやすいケースを探すのはなかなか難しいのが現状です。また高機能ケースになると価格が本体を大きく上回るのが常であり、最大の特徴を消し去ってしまいます。
標準ケースを含む大半のケースに電源ボタンがない
電源のオンオフをケースで制御することが出来ません。電源を入れたければ給電用USBポートにケーブルを接続する、電源を落としたければHDMIポートから出力しているディスプレイからシャットダウンする又はSSHでログインしてシャットダウンするという超絶面倒な方法を取ることが標準運用になっています。
GPIOからスイッチを繋いで導通したらシャットダウンコマンドを実行するように設定することもよく行われますが、これもケースの絡みが出てきて標準的なスキームがないのが現状です。
但し、我が家にあるRaspberry Pi 2Bと3Bについてはスイッチ付きケースを使用することで電源スイッチからも電源を落とせるようにしています。
製品そのままだと発熱が大きく、排熱が結構大変
高機能なICチップに必ず付きまとう発熱の問題ですが、Raspberry Pi3以降は特に顕著に発熱します。基盤サイズが2以前と3で互換性があるので原則として3でも2用のケースを使えますが、ケース内の排熱は気を使う必要があります。
また、ファンはずっと使っているといつか壊れるものなので可能であればパッシブヒートシンクで済ませたいところですが、装着するヒートシンクを大きくすると大抵の場合ケースと干渉するのでそこも考慮しないといけなくて前に挙げたケース問題がここでも絡んできます。
Raspberry Pi 4では特に尋常でない発熱がある
Raspberry Pi 4ではSoCの変更によって一気にスペックアップしたのは最も嬉しいところなのですが、Cortex-A72はそれまで採用していたインオーダー実行のCortex-A7/A53と違ってアウトオブオーダー実行のハイエンドアーキテクチャであるため、発熱量が物凄く多くなります。
スマートフォンでアウトオブオーダー実行のアーキテクチャを採用する場合、まず間違いなくbig.LITTLEを採用してインオーダー実行のアーキテクチャをコンパニオンコアとして一緒に採用します。これはアウトオブオーダー実行のアーキテクチャのみでは消費電力と発熱が大きいため。
恐らくライセンス料が理由でRaspberry Pi 4ではbig.LITTLEを採用できなかったのだと想像しますが、常時発生する発熱はCortex-A53とは比較になりません。発熱対策がカギになります。
Raspberry Pi 4ではケースの後方互換性がなくなったため一から仕切り直しとなりますが、エアフロー対策が急務となりちゃんと運用できる定番ケースがいつ頃出てくるのかはもう少し長い目で見る必要がありそうです。パッシブヒートシンクで済ませるのはかなり非現実的であると感じています。
Raspberry Pi 4では動作条件となる電力量が物凄く増えた
歴代のシリーズで見ていくと、2Bでは2A、3B+では2.5Aが推奨される電流になっています。他方、4では15Wが動作条件となっており、5V3Aが最低条件、USBポートに接続する機器をバスパワーで使用する場合はそこから必要な分がプラスされていくものと思います。USB-PD対応を謳っているものであれば恐らく問題なく使えるものと思いますが、スペック不要で省電力で使いたい場合は旧モデル(特に2B)を使うという選択肢も出てくるかと思います。
まとめ
これまでRAM不足で主にJavaのサーバーサイドアプリの様にRAMをモリモリ使う場合には太刀打ちできなかった用途にも4GBモデルで使えるようになった反面、気にしなければいけない事柄が増えたのも事実です。用途を見極めて環境が整ったら手を出したいですね。
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