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高雄のMRT(地下鉄)ではMastercard Contactless対応クレジットカード/デビットカードで自動改札を通れます
ざっくり概要を説明すると、台湾南部の高雄のMRTでは、Mastercard Contactless(旧称PayPass)搭載のクレジットカード、デビットカード1で自動改札を通ることができます。日本と韓国に先んじて北アジアでは初と書かれています。アジア初と書けないのは先にシンガポールでサービスが始まっているから。
〈新聞稿〉高雄捷運與萬事達卡攜手合作 建構領先日韓的智慧城市
2019年末までは、Mastercard、各クレジットカード発行銀行で優遇キャンペーンが開催されています。夏季限定キャンペーンチラシと通年キャンペーンの内容から読むとMastercardでは毎週土日に30%引き(7折、7掛け)で利用できるようです。特に記載がないので恐らく台湾内発行に限らず全てのPayPass対応カードに適用されるのではないかと思います。
聯邦銀行は事前登録すれば毎週月曜と金曜はNTD120まで全額バック、永豐銀行はウィークデイ(月曜~金曜)は一人一日あたりNTD60まで全額バックと書いてあるような気がします。他の銀行も曜日等条件ありますが30~50%還元、台湾Payで30%、UnionPay QuickPass(銀聯のNFC決済のはず)は数量限定で1回NTD10バックのようです。Samsung Payがポイント付与2倍かな?えぐいキャンペーンですね。
〈新聞稿〉萬事達卡攜手高捷 正式啟動北亞第一座智慧城市 導入開放式支付平台 一卡萬用超好搭
高雄のMRTで自動改札を通れる手段のおさらい(追記あり)
2013年に高雄に行った際はICトークンか一卡通(iPass)のみでしたが、その後他の方法でも通過できるようになっていました。
手段 | 概要 | URL |
---|---|---|
一卡通(イーカートン、iPass) | 一卡通票證公司が発行する交通系電子マネー。高雄市の交通機関向けに導入された。どうもLINE Payと提携している模様。2 | https://www.i-pass.com.tw/ |
悠遊卡(ヨウヨウカー、EasyCard) | 悠遊卡股份有限公司が発行する電子マネー。台北の交通機関向けに導入された。台北では様々な店で利用可能。 | https://www.easycard.com.tw/ |
icash2.0(愛金卡、アイジンカー) | 台湾でセブンイレブンを展開する統一超商が主導して愛金卡股份有限公司が発行する電子マネー。OPEN POINTが貯まる。 | https://www.icash.com.tw/ |
HappyCash2.0/遠鑫電子票證(有錢卡、ヨウチェンカー) | ドコモやSingtel等と提携する通信キャリア遠伝電信、太平洋百貨からそごうを奪い取ったらしい百貨店事業やらなにやら物凄いコングロマリットの東遠グループ主導の遠鑫電子票證股份有限公司が発行する電子マネー。系列の百貨店や全家ファミリーマートで使えることで普及させていったらしい。HAPPYGOポイントが貯まるらしい。 | https://www.happycashcard.com.tw/corporate/index.do |
單程票 | 券売機で買うICトークン。買ったことがないので詳細不明 | |
Mastercard Contactless(旧称PayPass) | このエントリーに記載。Mastercard Contactlessが使えるApple Pay、Google Pay(日本のはダメ)、Samsung Pay、台湾Payも必然的にマークが表示されています。 | https://www.mastercard.co.jp/ja-jp/consumers/features-benefits/contactless.html |
銀聯IC 閃付(QuickPass) | 銀聯/QuickPassの非接触クレジットカードと対応スマホのNFCでも利用できる模様。 | http://www.unionpayintl.com/hk/servicesProducts/products/innovativeProducts/mobilePayment/mobilequickpass.shtml |
Visaのタッチ決済(旧称payWave) | 2020年1月16日より利用可能(追記) | https://www.visa.co.jp/pay-with-visa/featured-technologies/contactless.html |
JCB Contactless(旧称J/Speedy) | 2020年1月16日より利用可能(追記) | https://www.jcb.co.jp/merchant/services/payment/jcbcontactless.html |
LINE Pay 一卡通 | 台湾在住の人(居留證のある外国人含む)ならLINE Payのアカウントと一卡通のアカウントと銀行口座を紐づけてQRコードも使えるようになるらしい。 | https://www.i-pass.com.tw/IPS/Event/LINEPay-iPASS/ |
高雄MRTの路線
高雄のMRT、前回訪れた時は紅線と橘線しかありませんでしたがLRTが開通し始めているので路線図も賑やかになってきましたね。
高雄MRTの自動改札機インターフェイス
前述のように、多様な決済手段が取れるようになっているため、自動改札も物凄いことになっています。
交通系とContactlessを分けている(恐らく意図的に離している)のは一卡通とPayPassの両方を積んでいたカードを翳すときにどっちを使うか明示させるためではないかと思いますがそれにしても凄い。
Mastercard Contactlessを搭載したデビットカードで自動改札を通った
今回試したカードはクレジットではなくブランドデビットで、このために作成した住信SBIネット銀行のミライノデビット(master)です。
Mastercard Contactless(旧称PayPass)カードが欲しかったので住信SBIネット銀行の口座を開設した
一般論としてデビットカードはクレジットカードの様に毎月の限度額まで使えるというシステムではなく、決済できる金額は銀行口座の口座残高が上限なので、決済の度に必ずオーソリと本決済が走るものと認識していました。なので、もし正常に使えたとしてもクレジットカードと比較して処理に時間がかかる為、それが電車の自動改札として(周りの客にも)ストレスにならない速度で処理できるのかという興味がありました。それに対する答えは以下の通りです。
改札通過(入場)
入場時に翳した時の動画です。この時、実はエラー音のようなププッという音が鳴っていて、およそ2秒後に無音のまま改札が開きました。
改札通過(出場)
今度は出場です。
およそ読み取り時間は0.8秒くらいではないかと思います。入場の時よりも確実に短いです。また、この時は改札は終始無音でした。一卡通よりも少し遅れるくらいかと思います。
これで「入場はだいたい2秒、出場は1秒弱で処理するのかな」と思ったのですが、2回目の入場で驚かされます。動画は撮ってなかったんですが、読み取りがすぐに終わったからです。
出場の際も待たされたということはありませんでした。また、デビットカードを使用したにも関わらず、入場時も出場時もカード利用のメールが届きませんでした。ここから察するに、
- 恐らく一番最初のカード利用の際にリアルタイムでオーソリを投げている
- オーソリが正常に通った場合、しばらく該当カードに対してはオーソリを投げずに決済を承認していて、後でまとめて処理をしている(恐らく日次)
- 入場駅、出場駅はカード側ではなく改札ネットワーク側で保持している
という挙動なのではないかと推測します。
請求が届くのが(デビットでも)3日後、使用した区間も不明
結局、帰国の途についてもデビットカードに請求が来ることはなく、ひょっとしたらエラーが起こっててタダ乗りできてたんじゃないかとすら思い始めましたが最終的には利用から3日後にデビットカードから口座引き落としされていました。画像中の「高雄MRT」というのは私が追加したメモ書きで、該当期間に他に使っていないので、利用から3日後の請求で間違いありません。
一つ気になるのは、複数回使用したのに請求が一つになっているのと、利用経路が不明で確認できないところ。後から更新されるといいなと思っていますが。
金額が妙に安いのは台湾の交通機関あるあるです。複数回乗っても日本円にして139円の請求で、しかもMRTは切符(ICトークン)の値段よりも交通系カードの場合15%くらい値段が安くなってるので余計にわかりません。PayPassの決済の場合にそれが該当するのかどうかすらわかりません。これはこれで困りますね。
近い将来JCBでも使えるようになる予定ですが…(【追記】使えるようになりました!)
今年後半のサービス開始を目指して、高雄のMRTとJCBが契約を締結したというニュースが今年の4月にありました。
〈新聞稿〉高捷與JCB簽署備忘錄 JCB卡今年底刷乘高捷 持續著力多元支付,定位鐵道支付領航者
JCB自体のクレジットカードは台湾でも発行されていて、Mastercard Contactless(PayPass)やUnionPay QuickPassと同じようにEMV Contactless準拠の非接触決済としてJCB Contactless(旧称J/Speedy)に対応したクレジットカードを発行しています。逆にポストペイ型の電子マネーであるQUICPayは台湾を含めた海外で発行していません。例えばこちらのカードは悠遊卡も乗っていますがJ/Speedy対応のカードです。
リリースの中にインバウンドの記載があり、JCBカードホルダーの需要を明言していますが日本で発行されているクレジットカードでJ/Speedyに対応しているカードはジャックスカードしか発行してないんですよね。
ジャックスカード J/Speedy | クレジットカードのジャックス
Apple PayではJCBブランドのクレジットカードを登録してJ/Speedyとして使えるものが多いですが、だとするとApple Payとジャックスカード J/Speedy前提のインバウンド需要を狙っていることになり…JCBとしてはこれをQUICPayの海外進出の足掛かりにする予定なんでしょうかねぇ…
2つの非接触決済ソリューション、「QUICPay」と「J/Speedy」の状況は?(JCB) | ペイメントナビ
また、「グローバル市場でのFeliCaサービスの機器増加に伴い、海外のお客様へのQUICPayサービスにも取り組んでいきたいと考えます」と渡辺氏は意気込みを見せる。
国際標準ではない決済方式を輸出しても受け入れられないと思うんですけど…J/SpeedyとQUICPay両対応とかするのかな…
2020年1月16日からMastercardのタッチ決済、銀聯QuickPassに追加して、Visaのタッチ決済とJCB Contactlessでも利用可能になりました。
高捷多元行動支付全球第一 AI行動客服啟動智慧捷運 - 高雄捷運全球資訊網
補足:桃園空港から台北までを運行するMRTでもVisa/MastercardのEMV Contactless決済が使えます
2017年3月に開業した桃園空港から台北までをつなぐMRTである桃園機場捷運でも高雄MRTでのVisa/JCB追加と同日の2020年1月16日より、Visaのタッチ決済、Mastercard Contactless、銀聯QuickPass対応が追加されています。JCB Contactlessは6月対応開始予定となっています。
台北に行く際の桃園機場の位置付けは東京での成田空港に近く3、着いたと思ったら台北に出るまでがもう一試練なところがありましたが、バス以外に時間を計算できる移動手段としての利用価値は大きいと思います。
付録:駅にある自動チャージ機も試しました
ここでは一旦テーマから離れて、駅に設置されている自動チャージ機も使ってみましたのでその時の記録も。以前は当然一卡通だけがチャージできた記憶がありますが、今回は一卡通と悠遊卡にチャージしました。
対応してそうなカードを見てみると…
左上が一卡通、右上が悠遊卡、下の段はよく見えないけど左がiCash2.0?、右がhappycashって書いてある気が!
おもむろに「票卡放置區」ってところにカードを置くと、自動的に残高と使用履歴が表示されます。「加値/査詢」をタップしてから置いても同じです。
画面の下の方に直前の利用履歴が表示されます。前回は2013年3月31日に高雄空港から帰ったんですね私…新幹線の切符買った後に左榮駅の外でボーっとしてたら蚊に刺されたのを思い出します。人生初の3月に蚊に刺された事件でした。ずっと気づかなかったんですが下に日本語ボタンがあります。
右上の方に加値と表示されているのでそこをタップして、硬貨(NTD)を投入していきます。投入されている金額がチャージされることを確認して、処理は終了です。印字するか聞かれるので印字する方にすると紙で内容が出てきます。
この機械の場合は硬貨のみ受け付けでしたが、機械によって札も受け付けるものがあります。
硬貨を1元から入れられるので、日本円に戻せない硬貨を減らして財布をすっきりさせれるという物凄いメリットがありますが、10元と50元は割と使うので少し手元に残した方がいいかなと思います。5元と1元は迷わず入れていいと思います。100元札も手元に置いといた方がいいかなと。500元と1000元だと自動販売機が対応してなくてお茶が買えないとか普通にあります。
実際にMastercard Contactlessの自動改札を使ってみて
イギリスから始まり、シンガポール、カナダ(バンクーバーの地下鉄)、オーストラリア(シドニー)など確実に広がって来てはいるクレジットカードによる交通機関の利用を体験できました。日本人が体験するなら一番近いのは台湾の高雄ではないかなと思います。
高雄の市民の人で電車移動にContactlessを使ってる人は今の段階ではほとんどいないのではないかと思います。その理由は恐らくそれ以外の既存の決済の方が高速に捌けるし、既存の方法の方が料金自体が優遇されている4ことが多いことからだと考えています。
翻って考えてほしいのは特にインバウンド需要を考えた時に、外貨の両替は結構面倒であるという事と、初めてくる場合は相場がわからずに必要のない金額を変えてしまって、帰国時に戻すと往復の為替レートと手数料を損してしまうという事です。
台湾の場合は空港で到着時に両替してもあまり市中で両替するのと変わらないレートで両替できますが、それでも市中まで出て両替したいという場合。交通機関で移動する際にクレジットカードで移動できれば、空港の両替所の営業時間とか関係なく、必要な最低金額+数パーセント程度で市内に移動できるのです。そのあたりの外国人への配慮として日本でも最低限切符くらいはクレジットカードで買えるようになってもいいのではないかと思います。
現状、JRの指定席券売機とみどりの窓口に並んでしかクレジットカードで切符を買えないのではないでしょうか。Welcome Suica5だって日本円でしか買えないんだから買うまでの間に日本円を両替しないと実質国内移動ができないに等しい訳です。
台湾の場合は街中ではまだまだ現金決済が広く使われています。夜市6での需要が大きいのとコンビニで使えるクレカが5大ブランドではない事、交通系電子マネーでも沿線では買い物ができることからクレジットカードはそれ以外の部分で使われているように見えます。その一方で第二の都市である高雄の交通手段としてある程度の高速性と利便性を両立したMastercard Contactlessを導入したのは英断であり、画期的な試みと捉えていいのではないかと思います。
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- PayPassのプリペイドカードも使えるとは思うのですが、リリース中に言及されているのがクレジットとデビットであることと、今回確認したのがデビットなのでこういう書き方にしています [return]
- これを書きながら調べていたところ、日本のLINE PayのQRコード決済はLINE Pay対応の店舗(コンビニ)ではそのまま決済ができるらしい。LINE残高が利用不可で、紐づけクレジットカードの決済になるとのこと。次行ったら試したいけど何年後かな。 日本のLINE Payは使えるのか? 台湾のキャッシュレス決済を体験してみた [return]
- 台北から遠い、国際便がメイン、夜便がなく夜間は空港が閉鎖される、松山空港という台北からほど近い空港がある、直通便は桃園〜成田、松山〜羽田 [return]
- 日本みたいに数円しか違わないとかでなく、10%以上違うこともある [return]
- PDF注意。https://www.jreast.co.jp/press/2018/20190221.pdf [return]
- 台北の寧夏夜市でAlipayとJKOPayが使えるようになったとか、花蓮の東大門夜市でHappyCashが使えるようになったというニュースが流れるのは、200以上ある台湾の夜市ではそれ以外は現金でしか支払えないことを意味しています。 [return]
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