TOC
タイムシフトマシン用のHDDが小さいので換装用のHDDを買う
タイムシフトマシンである東芝のHDDレコーダーD-M210のHDDの容量が小さいので換装しました。具体的な換装手順は別記事にしていますが、ここでは換装したSeagateのSkyHawk 6TBを選んだ経緯と参照した仕様を纏めます。
D-M210のHDDを換装する記事はこちら。
東芝のタイムシフトマシンD-M210のHDDをSeagate SkyHawk 6TB(ST6000VX001)に換装【画像大量】
タイムシフトマシンに求めるもの
タイムシフトマシンはそもそも全録動作をしてもらうので、一般的なPCに接続して使うHDDとは求めるものが違います。
- できるだけ低温(高温で動作し続けるとHDDは壊れる)
- 高速性は(書き込みが追い付かなくなる場合を除いて)必要ない
- できるだけ壊れない
- Streaming feature set対応が望ましい
Streaming feature set(俗称AVコマンド)に振り回される人生
BDレコーダーやHDDレコーダーに使われるHDDは、大地震のような天変地異に遭遇する場合を除けば長時間稼動が期待されているため、一般のHDDとは違ってStreaming feature setと呼ばれる仕様に準拠していることが多いみたいです。
対応有無による動作の違いは、書き込みでエラーが発生した場合にエラー箇所を飛ばしてその後の処理をするかリトライするかというような話らしく、1回のミスが発生した場合に突き刺さって残りの処理ができなくなることを防ぐ機能だそうです。
私がStreaming feature setの存在を知ったのはこちらの記事
AllFrameのキモはATAのコマンドに含まれる「ATAストリーミング」のサポートだ。
正確にはATA-7以降でサポートされた「Streaming Feature Set」で、日本を中心に需要の高いHDDレコーダーのための命令セットだ。多チューナー搭載のHDDレコーダーなどでは、同時刻に複数のストリームを確実に録画することが求められる。そうした用途のための特別なコマンド、ということになる。
で、どうもHDDレコーダーのHDDを交換する場合は、松下の場合はStreaming feature setに対応していないと書き込みができないようです。東芝の場合は対応していなくても動作はするようですが、可能なら対応しているHDDで換装したいところ(元々そういう用途に向けて作っていると思われるので)
また、何がきっかけなのかATA-7で定義されたStreaming feature setは日本語圏ではAVコマンドと呼称されることが非常に多いのですが、海外でこの呼称を用いているのはSeagateしかなさそう1で日本語圏を離れるとほとんど検索できないのでStreaming feature setで呼び続けていきたいところ。
Streaming feature set対応のHDDのメーカーと方式と容量と
HDDメーカー自体がかなり収斂されてきている中、Streaming feature set対応のHDDメーカーとシリーズは把握している中では以下のものがあります。
- Western Digital
- WD AV-GP(おそらく全機種で対応しているのはこれのみ)
- WD Purple(最新のものは非対応との話)
- WD Red(過去のもののみ?)
- 東芝
- DT01ABA/DT02ABAで数字の後にVが付いていて省電力モデルではないもの
- Seagate
- SkyHawkシリーズ(個別に品番で確認は可能)
この他にはNAS向けのものでストリーミングコマンドに対応していると表明しているSeagateのIronWolfもありますが、結構お値段が張るので今回は無視します。
Western Digital
AV-GP
Western DigitalのAV-GPは元々AV機器対応のモデルなので、今からStreaming feature set非対応にすることはないと思います。その代わり主要顧客がAV機器メーカーへの卸で、コンシューマー向けの販売がかなり少なくなっています。というか、販売代理店によってはディスコンの扱いです。
現在入手できる(在庫は薄い)ロジテックダイレクトを見ると、ラインアップは2TBのWD20EURXと3TBのWD30EURXです。
但し、ロジテックダイレクトではAV-GPとして販売されていないモデルであるWD40EURXはTekWindやCFD販売に記載されている情報からするとAV-GPと同じなのでStreaming feature set対応なのではないかと推測しています。メーカーとしてWDを使いたいなら現在はAV-GPが鉄板なのは間違いないと思いますが、容量が最大でも4TBになるので、容量を伸ばしていく目的では難しい可能性も。
実はD-M210に交換前に使われていたのもWD20EURXでした。
WD Purple、WD-Red
Streaming feature setの存在を知った記事で取り上げられていたWD Purpleは現在販売中のモデルは非対応であるという話があり、デグレードであればWestern Digitalから発表してほしかったというのが正直なところです。
WD RedはNAS向け24時間稼動に向けたラインアップで、途中からSMRをラインアップに混在させた結果CMRのものはWD Red Plusとして販売するようになってしまったこと、回転数を7200rpmに上げているのでタイムシフトマシンで使う際に温度が上がってしまって故障率が上がる懸念があることという不安要素もあります。また、現在販売中のものはStreaming feature setに対応しているか不明です(情報が見つからない)
WD Redの過去モデルは実はStreaming feature set対応
今回、HDDを選ぶにあたって試しに自宅のNAS(ReadyNAS RN104)で使っているHDDでStreaming feature set対応かどうか確認しましたが、WD Red WD101EFAX-68LDBN0は実はStreaming feature setに対応しています。
東芝
DT01ABA-VとDT02ABA-Vの違い
東芝のStreaming feature set対応のHDDはDT01ABA-VシリーズとDT02ABA-Vシリーズがあります。DT01ABA-Vの方が古いシリーズで最大容量は3TB。DT02ABA-Vは新しいシリーズで最大容量は6TBです。
この2つのシリーズは発売時期の違いがありますが、それ以外にDT02ABA-Vは記録方式がSMRとなっている(DT01ABA-VはCMR)ので、SMRでも問題ないと考える方は(入手できるなら)有力な選択肢になりうると思います。CMRとSMRについてと個人的な考え方は後述します。
Seagate
Seagateはどうしてももの凄く故障が多かった時のイメージが残っていて、今でも信頼性が必要な用途に二の足を踏むメーカーというイメージを持つ人もいるのではないかと思います。
ですが、いわゆるNAS用モデルやここ数年に発売しているモデルではそういった評価を見なくなったので、結果的に今回ST6000VX001を購入しました。入手性が一番良いのとCMRであることが確認できるのも良い点でした。(2TBと4TBはSMRモデルとCMRモデル両方あり)
また、HDDのモデル毎のスペックシート(PDF)を公開しているので、(かなり面倒ですが)購入前にStreaming feature setの対応有無を確認できるのも良いところです。ST6000VX001の場合はこちら。
https://www.seagate.com/files/www-content/product-content/skyhawk/en-us/docs/100870480a.pdf
hexの6173に対応するビットは以下に対応しています(実物から取った値とちょっと違います(後述))
Bit | Word 84 |
---|---|
0 | SMART error login is supported. |
1 | SMART self-test is supported. |
2 | Media serial number is supported. |
3 | Media Card Pass Through Command feature set is supported. |
4 | Streaming feature set is supported. |
5 | GPL feature set is supported. |
6 | WRITE DMA FUA EXT and WRITE MULTIPLE FUA EXT commands are supported. |
7 | WRITE DMA QUEUED FUA EXT command is supported. |
8 | 64-bit World Wide Name is supported. |
9-10 | Obsolete. |
11-12 | Reserved for TLC. |
13 | IDLE IMMEDIATE command with IUNLOAD feature is supported. |
14 | Shall be set to 1. |
15 | Shall be cleared to 0. |
SMRとCMR
HDDは補助記憶装置として古くから様々な方法で記録密度を上げて容量を増やしていますが、CMRという従来の方式に対してSMRという新しい方式を採用することによって単位面積あたりの記録密度を上げています。
で、いつかは全てSMRに移行するのかなぁとも思うんですが、現在はCMRのままの製品も多い実情で何がよいのか何が悪いのかを個人の意見として纏めてみます。
SMRの良いところ
シンプルに記録容量が増える(値段が下がる)。これにつきます。
SMRの悪いところ
使い方によってはランダムライト性能が下がる。これはSMR方式の場合データを削除すると隣接するトラックも削除してしまうため、メディアキャッシュを経由してデータを並び替えてから書き込むという処理にしているから。
メディアキャッシュを使うのは個人的に問題とは思いませんが、ランダムライト性能が下がるのは常時一定量の書き込みを行うことが前提のタイムシフトマシンには絶望的に向いていない仕様ではないかと感じています。また、物理的にクラッシュした場合には漏れなく隣接するトラックもクラッシュするため、救い出せるデータが少なくなるというのも懸念される仕様ですが、こればっかりはSMRに限らず一蓮托生で仕方ないんだろうなとも思っています。
また、記事中で触れている書き込みの応答時間のグラフからも常時書き込み前提の用途ではSMRは使うべきではないと感じています。
購入したST6000VX001はこんな感じ
サクッと通販で買いました。流通性が高いと購入方法に選択肢があるのも良いところ。
リテール品でした。
帯電防止袋と大きい目のエアーキャップに包まれています。
WDのHDDとはラベルの上下が逆です。上側に端子類が来ます。
HDDがStreaming feature set対応か確認する
Streaming feature setに対応しているかどうかはWindowsではCrystalDiskInfoで確認するのが一般的なようですが、LinuxではS.M.A.R.T値をチェックするときに使うsmartctl
コマンドで確認できるので、こっちの方が見間違えることがなくてよいかなと思っています。Ubuntu/Debianで確認しています。
smartmontools
パッケージをインストールしていない場合はインストールします。
# apt-get install smartmontools
内蔵HDDの場合(NASに接続しているHDD)
内蔵HDDを確認する場合はsmartctl
コマンドの引数に--identify=wb
を付与すると出力できるので、試しにNASのHDD(最近のノートパソコンはSSDなので見ても意味がないと思ったので)で確認してみました。HDDは
- WD Red WD101EFAX-68LDBN0(/dev/sda)
- 東芝MD04ACA600(/dev/sdb)
の2台です。(実行結果が574行とめちゃくちゃ長いのでgrepで必要な個所だけにしています)
# smartctl /dev/sda --identify=wb | grep "Streaming feature set supported"
84 4 1 Streaming feature set supported
# smartctl /dev/sdb --identify=wb | grep "Streaming feature set supported"
84 4 0 Streaming feature set supported
実行してみて初めて知りましたが、WD Redの10TBはStreaming feature setに対応していました。Redのこの頃のモデルは対応していたんですね(但し、ファームウェアはPurpleの方がAV機器向けのはず)
USB接続のHDDの場合(Seagate SkyHawk 6TB ST6000VX001)
本題の今回買ったST6000VX001を確認しました。USB接続のSATAアダプタ経由で確認したのでコマンドシンタックスに引数-d sat
を追加します。
# smartctl /dev/sdb -d sat --identify=wb | grep "Streaming feature set supported"
84 4 1 Streaming feature set supported
結果としては問題なくStreaming feature set対応であることを確認できました。良かったです。但し…
ST6000VX001のデータシートと一部の値が違う
上記のように、サイト上で公開している16進数の6173なんだろうなと思って実行してみた結果、84ワード目の値が
84 - 0x4133 Commands and feature sets supported
84 15:14 0x1 Must be set to 0x1
84 13 0 IDLE IMMEDIATE with UNLOAD feature supported
84 12:11 0x0 Reserved for TLC [OBS-ACS-3]
84 10 0 URG bit for WRITE STREAM (DMA) EXT supported [OBS-8]
84 9 0 URG bit for READ STREAM (DMA) EXT supported [OBS-8]
84 8 1 64-bit World Wide Name supported
84 7 0 WRITE DMA QUEUED FUA EXT supported [OBS-ACS-2]
84 6 0 WRITE DMA/MULTIPLE FUA EXT supported
84 5 1 GPL feature set supported
84 4 1 Streaming feature set supported
84 3 0 Media Card Pass Through Command supported [OBS-ACS-2]
84 2 0 Media serial number supported [RES-ACS-3]
84 1 1 SMART self-test supported
84 0 1 SMART error logging supported
となっていました。早い話6173ではなく4133だったということです。0110 0001 0111 0011ではなく0100 0001 0011 0011ということで、
- 84 13 0 IDLE IMMEDIATE with UNLOAD feature supported
- 84 6 0 WRITE DMA/MULTIPLE FUA EXT supported
の2つのbitがデータシート上ではビットが立っていたものの、実物ではビットが立っていなかったものとなります。前者は”IDLE IMMEDIATEコマンドが発行された際にアンロードする”、後者は文献自体がよく見つからなかったのでどういう違いがあるのかわからず…今回のStreaming feature setは立っているのが確認できたので良かったものの。
スポンサーリンク
- ATA AV Command supportでひっかかる [return]
comments powered by Disqus