USB接続の無線LAN子機 TP-Link Archer T2U V3(2357:011f)とT2U Nano(2357:011e)をUbuntu 20.04環境で使う

Posted by 雅楽斎 on Wednesday, December 16, 2020

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安牌がわからない

LinuxでPC用のハードウェアを使う場合、Windows用のドライバが公開されていることが常で、その当時を考えれば現在のLinuxでのドライバー類もだいぶ改善されて、最近では接続するだけでそのまま使えるようになることがかなり増えました。

ネットワーク機器の場合は有線LANと無線LANに大別されますが、有線LANの場合は(最新の機器を除けば)接続するだけで使えることが多い印象です。一方、無線LANの子機は使用しているチップの種類が有線LANと比較して多く、接続しただけで使えない場合はインターネット上に公開されている情報を元に、手元で当てはめていく作業が中心になると思います。

無線LAN子機の場合、製品名よりも使用しているチップが大事

無線LANの子機をLinuxで使う場合、基本的にメーカーや製品名よりも使用しているチップが一番大事なことが多いです。親機の場合は機能やファームウェアのメンテナンスがメーカーによって千差万別のためにメーカーで製品を選ぶことが大事だと感じることがありますが、子機で同じチップを使った製品のメーカー間の差異はアンテナの配置(アンテナ感度)くらいしかないため、メーカーで選んでも手間が変わることはあまりないのがこれまでの経験則です。製品情報として搭載しているチップを明記してもらえるとユーザー側で購入前に判断する手間が物凄く省けるので、メーカー側でそういった慣習が広まることを期待したいところです。

製品からチップを調べられれば使えるかどうかがわかりやすい

ここからは完全にインターネット頼みになります。無線LAN子機を接続してそのまま使えない場合、とにかく使っているディストロで使える情報が見つかれば一番手間が少ないため、できるだけ情報を集めることをお勧めします。

また、海外でもシェアがあるメーカーを調べると世界中のユーザーの使える・使えない情報が見つかる可能性が高くなるため、無線LAN子機に限って言えばBuffalo等の日本国内のメーカーは個人的にはお勧めしません1

TP-LinkのArcher T2U(V3)、Archer T2U Nanoを購入

入手性が容易で、事前に情報が見つかったことから、今回はTP-LinkのArcher T2U(Archer T2U V3)とArcher T2U Nanoを購入しました。

決め手になったのは、事前に情報がインターネットで見つかったことに加えて5GHz帯(IEEE802.11a、802.11ac)で使える2ことです。2つ買ったのは纏め売りをしていて別々に買うよりもいくらか安くなることと、将来的に必要になる可能性が高いと判断したからです。

Archer T2U | AC600 USB Wi-Fi アダプター 無線LAN子機 | TP-Link 日本

Archer T2U Nano | AC600 ナノ 無線LAN子機 | TP-Link 日本

動作しそうだと判断したのはこちらの情報から。

transitive.info - Ubuntu 20.04 で Archer T2U Nano を使う

ubuntu 20.04 LTS TP-link AC600 ドライバ追加 – 山と写真のサイト

外観

Nanoの方が小さいですが、Archer T2U V3でも十分コンパクトです。

箱の側面に仕様が記載されています。

Ubuntu MATE 20.04で使う

lsusbコマンドでベンダーIDとプロダクト番号を確認

USB機器の素性を調べるため、接続後にベンダーIDとプロダクト番号をlsusbコマンドを実行します。まずはT2U Nanoの方。

$ lsusb
Bus 001 Device 004: ID 2357:011e TP-Link 802.11ac WLAN Adapter 
Bus 001 Device 001: ID 1d6b:0002 Linux Foundation 2.0 root hub
Bus 005 Device 002: ID 0483:2016 STMicroelectronics Fingerprint Reader
Bus 005 Device 001: ID 1d6b:0001 Linux Foundation 1.1 root hub
Bus 004 Device 001: ID 1d6b:0001 Linux Foundation 1.1 root hub
Bus 003 Device 001: ID 1d6b:0001 Linux Foundation 1.1 root hub
Bus 002 Device 001: ID 1d6b:0001 Linux Foundation 1.1 root hub

T2U V3ではこうなります。

$ lsusb
Bus 001 Device 005: ID 2357:011f TP-Link 802.11ac WLAN Adapter 
Bus 001 Device 001: ID 1d6b:0002 Linux Foundation 2.0 root hub
Bus 005 Device 002: ID 0483:2016 STMicroelectronics Fingerprint Reader
Bus 005 Device 001: ID 1d6b:0001 Linux Foundation 1.1 root hub
Bus 004 Device 001: ID 1d6b:0001 Linux Foundation 1.1 root hub
Bus 003 Device 001: ID 1d6b:0001 Linux Foundation 1.1 root hub
Bus 002 Device 001: ID 1d6b:0001 Linux Foundation 1.1 root hub

また、dmesgでもベンダーIDとプロダクト番号は確認可能です。【idVendor=2357, idProduct=011e】が該当する箇所です。

[ 3381.751870] usb 1-5: new high-speed USB device number 4 using ehci-pci
[ 3381.913162] usb 1-5: New USB device found, idVendor=2357, idProduct=011e, bcdDevice= 2.00
[ 3381.913167] usb 1-5: New USB device strings: Mfr=1, Product=2, SerialNumber=3
[ 3381.913170] usb 1-5: Product: 802.11ac WLAN Adapter 
[ 3381.913172] usb 1-5: Manufacturer: Realtek 
[ 3381.913174] usb 1-5: SerialNumber: 00e04c000001
[ 3382.071930] usb 1-5: 88XXau d0:37:45:xx:xx:xx hw_info[107]

以上のことから、それぞれのベンダーIDとプロダクト番号は

  • Archer T2U Nano 2357:011e
  • Archer T2U V3 2357:011f

であることがわかります。

Archer T2U V3とArcher T2U Nanoはrtl8812auドライバで使えるが、Ubuntuのrtl8812auパッケージは使えない

ここが若干問題で、ベンダーIDとプロダクト番号からrtl8812auパッケージがUbuntuにあるので、インストールすれば使えるのかと思いきやバグ報告ページを見ると猛烈にバグ報告がされながら一向に対応していない状態に陥っていることが見て取れます。

Bugs : rtl8812au package : Ubuntu

Aircrack-ngの提供するドライバは使えるしメンテナンスされている

Ubuntuの提供するドライバが使えない状況で、使えないのかといえばそんなことはなく、Aircrack-ngというWiFiアクセスポイントのパスワードを解析するプロジェクトが提供するドライバはUbuntu 20.04で使えます。

皮肉な現実ですが、Ubuntu MATE 20.04で使うことが目的なので、今回はAircrack-ngのドライバを使います。githubのリポジトリはこちらです。

GitHub - aircrack-ng/rtl8812au: RTL8812AU/21AU and RTL8814AU driver with monitor mode and frame injection

RTL8812AU/21AU and RTL8814AU driver with monitor mode and frame injection - GitHub - aircrack-ng/rtl8812au: RTL8812AU/21AU and RTL8814AU driver with monitor mode and frame injection

必要パッケージのインストール

gitをインストールしていない場合はインストールします。

# apt-get install git

dkmsパッケージをインストールします。

# apt-get install dkms

ドライバのビルド・インストール

適当なディレクトリで作業します。

$ git clone -b v5.6.4.2 https://github.com/aircrack-ng/rtl8812au.git
$ cd rtl8812au/
$ sudo make dkms_install
(snip)
DKMS: install completed.
dkms status
8812au, 5.6.4.2_35491.20191025, 5.4.0-58-generic, x86_64: installed

makeコマンドの中でdkms installをやるので、これだけでドライバのインストールまで終わります。

アンインストール時は以下のmakeコマンドを実行すればいいようです(未検証)

$ sudo make dkms_remove

使えるようになっている場合、interface名はwlxにMACアドレスを繋いだ文字列が割り当てられるようです。

$ ip addr show
4: wlxd03745xxxxxx: <NO-CARRIER,BROADCAST,MULTICAST,UP,LOWER_UP> mtu 2312 qdisc mq state DORMANT group default qlen 1000
    link/ether d0:37:45:xx:xx:xx brd ff:ff:ff:ff:ff:ff

後は他の無線LANと同じように接続します。(画像の上の方は元々繋いでいたアクセスポイントが表示されています)

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  1. ネット上で確実な情報が見つかる場合を除く [return]
  2. 最近特に2.4GHz帯のAPが多すぎてチャンネルが空いてないことすらあるので [return]

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